どうして家族信託が注目されるの?従来の制度の使いにくさって?

Q:家族信託への関心が高まっています。成年後見や遺言は使いにくい?

A:相続対策には、様々な方法があります。それぞれメリットとデメリットがありますので、ご自身に合った最も適切な方法を選ぶことがとても重要です。生前の財産を承継する方法としては『生前贈与』がありますし、認知症になったときの財産管理としては『成年後見制度』、亡くなった後の財産の承継としては『遺言』が一般的です。しかし、これらの制度にはそれぞれ使いにくさがあり、自由な設計が可能な家族信託に注目が集まるというわけです。

  1. 生前贈与について
    相続税対策としては生前贈与がありますが、贈与した場合には贈与税が問題になります。贈与税の基礎控除額が110万円ですので、それを超える贈与をした場合には税率の高い贈与税が課税されます。贈与税が非課税になる特例もありますが、資金使途や限度額が定められているなどの使いにくさがあります。
  2. 遺言について
    財産の相続対策として遺言を作成する方は年々増えています。しかし、いちど遺言を作成すれば万全というわけではありません。大きな問題として、遺言では二次相続の指定が出来ないことがあります。遺言に記載できるのは自分が死んだときの相続までで、その次の相続について財産の承継者を指定することはできません。また、遺言作成後の相続人の変化、資産の入れ替えなどによってせっかくの遺言が実際には使えないというケースもあります。
  3. 成年後見制度について
    認知症などで判断能力が衰えた高齢者の財産を管理するには、家庭裁判所に成年後見人(保佐人・補助人)を選任してもらうことになります。しかし、成年後見人の職務は、本人の財産を減らさないという観点から行うため、相続対策の贈与はもちろん、資産運用も許されず、自宅不動産の売却については家庭裁判所の許可が必要になります。また、成年後見人には親族のほか司法書士や弁護士のような専門職が選ばれるケースも多く、その場合は報酬が発生することになります。